小説 三津田信三

【三津田信三/ついてくるもの】捨てても戻ってくる雛人形!珠玉のホラー短編集

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おすすめホラー小説「ついてくるもの」の感想・レビューです。

三津田信三さんのホラー短編集で、ホラーとミステリーが融合したストーリーが多いです。
また、三津田氏本人や三津田氏の知人、氏の作品が登場するなど、現実と虚構の境が淡く実話なのかフィクションなのか考えさせられます。

実話怪談とのことですが、信じるか信じないかはあなた次第。
どこからどこまでが嘘で、どこからどこまでが本当かはご想像にお任せ、といったところでしょうか。

あまり深く考えずに感覚で楽しむか、他作品とも比較して考察を楽しむか、読み方は人それぞれです。

作品名:ついてくるもの
著者:三津田信三
発行日:2015年09月15日
発行元:講談社文庫

7つの薄気味悪い怪異譚

  • 「夢の家」
    三津田氏いきつけの寿司屋で出会った男性が、三津田氏がホラー作家と聞いて、自身の奇妙な体験を聞いてほしいと懇願する。
    どうやらおかしな夢を見るというのだが、日に日に夢は変化を遂げ、男はこのままでは引き込まれて戻れなくなるのではないかと恐れていたが――
  • 「ついてくるもの」
    三津田氏の知人が蒐集した怪異譚。
    女性は高校生の時、空き家の裏にひな壇とお雛様を見つける。何故か憑りつかれたようにお雛様を持って帰ってしまってから、周囲に不幸が……
    女性自身は悪夢を見るようになって熱を出し、家で飼っているインコと猫も体調を崩す。
    お雛様を持ち帰ったせいと考え、雑木林に捨てたり、川に流したりしたが、その度お雛様は戻ってくる。やがて、祖母が交通事故で、弟は難病で亡くなり、母親は首を吊ってしまう。
    女性はお雛様から逃れることができたのか――
  • 「ルームシェアの怪」
    三津田氏がルームシェアについて取材した際に聞いた怪異譚。
    一軒家でルームシェア生活を始めた女性。共同生活にはルールがあったが、思っていたよりはじめは快適だった。
    だが、ある日を境に、ひとりの同居人の様子がおかしくなる。
    部屋にいるようなのだが、いくら声をかけても返答がない。姿も見かけない。けれど、部屋の中を動き回っている気配はする。
    そういえば、前に心霊スポットに同居人たちと行ったことがあり、それ以降異変が起きている気がするのだが――
  • 「祝儀絵」
    三津田氏が体験者に取材した怪異譚。
    男性の叔母が、古道具屋で購入したという絵をくれた。
    結婚式を描いた絵だったが、その絵を部屋に飾ってから、男性の知人や恋人の元に婚約者と名乗る女性が現れるようになる。
    しかし、どんな女性だったかと尋ねても、誰も特徴を覚えていない。
    ある日、山形の曾祖母が訪れた折、その絵が「むさかり絵馬」だと分かって――
  • 「八幡藪知らず」
    三津田氏の知人から伝え聞いた怪異譚。
    東京から関西へ引っ越した小学五年生の恵太は、学校の友達と様々な場所を探検して遊んでいた。
    恵太が住む家の近所には、入ったら出られなくなるという森があった。
    仲間のひとりが森を探検しようと言い出した。
    探検の前に、どんな言い伝え・歴史がある森なのか調べ、懐中電灯や紐なども準備することになったが、恵太は怖くて乗り気ではなかった。
    森に行くことになってからというもの、夕方になると恵太の家の郵便受けに謎の紙片が入るようになる。
    「カエレ」「くルナ」……
    これは森からの警告なのか――
  • 「裏の家の子供」
    三津田氏が翻訳家の女性から聞いた怪異譚。
    翻訳家の女性は、当時付き合っていた男性と結婚を前提に同棲を始めた。
    住宅地の一戸建てを賃貸し、先に男性が引っ越していたが、女性の引っ越しが終わってすぐ、突然別れを切り出された。
    翻訳の仕事が忙しく、すぐに引き払う余裕がなかったため、女性はそのままその家に住み始めたが、裏の家から子供の声が聞こえてくる。
    時には大きな奇声が聞こえ、仕事にならない。玄関も窓もすべて施錠しているのに、夜中には物音が……
    そして、女性は決心し裏の家に赴くが――

※7つ目の短編は、ハードカバー版と文庫版で異なりますので割愛いたします。

三津田氏の趣味も垣間見える

個人的には「ついてくるもの」「ルームシェアの怪」「八幡藪知らず」が面白かったです。

作品により、三津田氏自身が語り部であったり、小説風に綴ったり、体験者本人の語り口調だったりと、趣向を凝らした演出です。

三津田氏が親しんだミステリー・怪奇文学などの紹介も随所にあります。
江戸川乱歩氏の作品など、怪奇文学・ミステリー好きなら興味をそそられる作品が出てきますので、ついググってしまいますね(笑)

三津田氏の秀逸なホラー短編集、長編作品は他にもありますので、色々探してみてください。

【三津田信三/怪談のテープ起こし】奇妙な共通点!カセットテープから始まる怪奇!!
おすすめホラー小説「怪談のテープ起こし」の感想・レビューです。「怪談のテープ起こし」は三津田信三さんのホラー短編集です。「小説すばる」で2013年3月号から2016年1月号に不定期連載した実話怪談6篇が収録されています。短編を一冊にまとめるに際し、女性編集者が実際に体験した不気味な出来事を各短篇の間に挿入してほしいと言い出して。短編と女性編集者の体験には奇妙な共通点が。

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